日本本土を襲うとも心配された超巨大台風は中国方面にそれたものの、奄美大島で豪雨による甚大な被害が発生していた10月21日からの3日間、山形市国際交流プラザ(山形ビッグウイング)で今年のリハビリテーション・ケア合同研究大会が開催されました。現在の日本の福祉や医療の前途にはこのような気候に象徴されるように黒い雲が垂れ込めており強い逆風も吹いておりますが、山形市内は晴天に恵まれ気持ちのよい秋空の下約2,000名の参加者をお迎えすることができました。これからの日本のあるべき福祉や医療などの方向性をこの大会で見い出し、この大会を希望の光に向けた新たな出発点としたいとの願いから今回のメインテーマを「今ふみ出そう新しい10年への一歩を」といたしました。そのテーマに沿うようにプログラムの流れを工夫いたしましたがいかがだったでしょうか。
まず始めに大会長講演として江戸時代に財政破綻に陥っていた米沢藩の財政を、福祉を充実しながらも再建した名君上杉鷹山の業績をご紹介いたしました。それに引き続き千葉忠夫先生とウラ・アンデルセン先生から福祉先進国のデンマークの様子をおうかがいしました。生活大国となるためには真の民主主義が必要であることと、そのための教育の理念や女性の社会進出により少子化から回復したこと、本人の意思を尊重した介護のあり方など多くのことを学びました。
2日目には日本のリハの大先輩である澤村誠志先生、大田仁史先生、米満弘之先生のお三方による鼎談で、現在の日本の福祉や医療の問題点やこれからのあるべき姿を大胆に語っていただき、私たちはお三方のエネルギーに圧倒され深く感銘いたしました。
最終日には医師でありかつ政治家でもある梅村聡氏と渡辺孝男氏にこれからの医療・福祉の話をうかがった後で、厚生労働省老健局老人保健課長の宇都宮啓氏より介護保険の動向についてお話をおうかがいいたしました。そして最後に主催6団体の会長に登壇いただき、まとめのシンポジウムを行いました。また各主催団体それぞれのシンポジウムでも日本のリハのさまざまな課題とこれからの方向について討議していただきました。
特別講演・特別企画・教育講演ではリハとノーマリゼーションに関することをさまざまな切り口で語っていただきました。今大会ではノーマリゼーションと性の問題を企画の一つの目玉として取り上げてみましたが、いかがだったでしょうか?
一般演題はリハ・ケア大会史上最多の713題もの多数の発表をいただき、各会場では活発な討議が行われました。演題数が予想以上に多かったためプログラムがたいへん窮屈なものになってしまい、発表者と参加者の方々にはご迷惑をおかけいたしました。演題の中でも多かったものが回復期リハに関するものであり(124題)、回復期リハ病棟のエネルギーの高さをうかがわせるものでした。次いで訪問リハや通所リハについての演題がそれぞれ60題、46題と多く、訪問・通所リハへの関心の高さがうかがえました。
参加者の皆様は3日間の大会を通してこれからの日本の福祉、医療などの道筋を示す光の一端を見つけられたことと存じます。日本のリーダーはいままでのしがらみに囚われず、国家のありかたのしっかりとしたビジョンを示し、その中でも大きな位置を占める国民の福祉の姿を早く示していただきたいと願っておりますが、そのために私たちも発信と提案をしてゆかなければならないと感じた3日間でした。また、国家の骨格を強固なものにするためには、やはり国民福祉の充実なくしては成し得ないものと確信いたしました。